認知症
認知症の定義
DSM-W
・記憶障害
・失語、失行、失認、実行機能障害のうち1つ以上あり
・そのため社会的・職業的機能の著しい低下
・病前の機能水準からの著しい低下
・せん妄状態は除く
ICD-10
・記憶障害、認知機能障害が存在
・意識の混濁はない
・「情緒的不安定、易刺激性、無関心、社会行動における粗雑さ」のうち1つ以上あり
・記憶障害、認知機能障害が6ヵ月以上継続
健忘と認知症の違い
| 健忘 | 痴呆 |
脳の変化 | 生理的な脳の老化 | 病的な脳の老化 |
経過 | 進行しない | 進行性 |
状態 | 記銘力低下が主 | 多様な認知機能の低下 |
失見当 | なし | |
日常生活 | 支障なし | 支障あり |
高次脳機能障害学
1つ1つの高次脳機能障害について詳しく書かれていて、臨床にも役立ちます。
認知症をきたす疾患
・アルツハイマー病
・女性、老年期の発症が多い
・前向性健忘で発症(側頭葉内側部、大脳後方領域の変性が先行)
・発話は流暢だが、喚語困難・迂言がみられる
・視空間性能力の障害
・人格は末期まで保たれる(障害されないわけではない)
・進行するとせん妄がみられる
・早期から病識の欠如
・薬物治療:アリセプト
・前頭側頭型認知症(代表的なものにピック病)
・人格障害で発症
・病巣は、前頭葉皮質〜側頭葉前頭部
・初期は記憶障害は軽度だが、しだいに進行
・発話減少
・視空間性能力は比較的保たれる
・せん妄は少ない
・脳血管性認知症
・脳血管障害と認知症に因果関係が見られる場合に診断される
・脳出血より脳梗塞で発症しやすい
・記憶障害、自発性低下、意欲低下、無関心がみられる
・判断力、理解力、人格は比較的保たれる
・多発梗塞性認知症…まだら認知症
・クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオン病)
・初老〜老年期に発病
・急速に進行する認知症で、ほとんどが1〜2年で死亡する。
・認知症、錐体路・錐体外路症状、ミオクローヌスが主症状
・視覚失認、小脳症状、筋萎縮がみられることもある
・コルサコフ症候群
・記憶障害、健忘、失見当識、作話からなる症候群
・その他の高次脳機能は比較的保たれる
・アルコール依存に伴う栄養障害(ビタミンB1の欠乏)が原因
・正常圧水頭症
・三主徴:記銘力障害、歩行障害、尿失禁
・脳室の拡大が認められるが、頭蓋内圧は正常範囲
・シャント手術により症状が改善される
・レビー小体型認知症
・初期から生々しい幻視が見られる(小動物、虫、人…)
・パーキンソン症状がみられる
他に、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、もやもや病、頭部外傷後後遺症、
尿毒症、肝障害、ポルフィリン症、甲状腺機能低下症、アジソン病、下垂体機能低下症、副甲状腺機能低下症、てんかん 等
スクリーニングテスト
MMSE(Mini-Mental State Examination)
30点満点、23点以下が認知症の疑い
項目:見当識(時間、場所)、記憶、計算、呼称、復唱、聴理解、読解、書字、模写
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)
30点満点、20点以下が認知症の疑い
項目:見当識(時間、場所)、記憶、計算、数唱、語想起
記憶検査
三宅式記銘力検査
言語性の記憶検査
アルツハイマー病初期の検出に有用
Rey複雑図形検査
視覚性・視空間性の記憶検査
数唱
即時記憶の検査
知能検査
WAIS-V
遂行機能検査
WCST
Stroop test
語想起
面接・日常生活での評価
CDR
患者について良く把握している介護者や家族からの情報をもとに5段階評価
項目:記憶、見当識、判断力と問題解決、社会適応、家庭状況および趣味・関心、パーソナルケア
リハビリ
・進行性のものが多いので、できる限り自立した生活を送ることが目標
・手続き記憶が保たれることが多いため利用
・リアリティーオリエンテーション
・回想法
・現実見当識訓練法
・絵画療法
・ダンスセラピー
・誤りなし学習